2011年2月27日日曜日

キムジュンギュ「歌を積んだ配達夫」
김준규 "노래실은 배달부"

 このブログで取り上げたいヤツはたくさんあるんですけど、なかなか時間がとれなくてブログの更新が後回しになってしまい、読んでくださる方もたくさんいるのに申し訳ないかぎりです。
 実は私、今月(2011年2月)からポンチャックCDやDVDの通販の仕事を始めまして、その準備に忙しかったわけなんですが、始めてみるとけっこう反響が大きくて、やっぱりやってよかったなと。ありがたいことでございます。

 今回仕入れたものの中で、印象深かったものが「追憶のアンコールサンサンパーティー」と「楽しいサンサンポルカ」のサンサンシリーズです(笑)。

 これで歌っているキムジュンギュっていう人が私は好きでですねー。出会いはもう10年以上も前でしょうか。

 今ではキレイなソウルの清渓川だけれども、東大門からさらに東に行くと、昔は道路と高架道路との2段構えで覆われていて、それに沿って31アパートという半ばスラム化したアパートが、白い大きな屏風のように建っていたところがあったんです。
 その、スラム化したアパートに沿って長大なガラクタ市場が形成されていて、私はそのなんでもありの猥雑な雰囲気が大好きで、中でも古いレコードやビデオ、ポンチャックのテープやCDなど、私にとってはまさに宝の山でしたね。

 ポンチャックのCDはここに来るたびにジャケットだけを見て10枚、20枚と買っていたんですがあるとき、露店のリヤカーに積まれたCDからいつものように10枚ほど適当に選んでから、店のおばちゃんに値段をまけてくれるよう交渉したんですよヘタな韓国語で。
 当然ダメと言われたんですけど、旅の恥はかき捨て的に粘ったら、おばちゃんはしょうがねーなーみたいな顔で、このCDをくれました。


 もともとLPレコードとして発売されたもののようですが、不思議なことに、ジャケットに「歌を積んだ配達夫(1)/ギター伴奏」とあるだけで、歌手の名前がどこにもないんです。
 もしかしたら「歌を積んだ配達夫」ではなく、この歌手がヨンさまと同じ「裵」姓で「歌を積んだ裵・達夫」ということなのか? とも思いましたがそんなワケではもちろんないし…。

 その後、歌手名のわからぬまま10数年が過ぎテープよりCDよりiTunesが幅をきかせる昨今。思いついてこのCDをパソコンに突っ込んでiTunesで再生したら、驚いたことに曲名のみならずちゃんと歌手名も「김준규キムジュンギュ」と表示されたのでした! 

 それでまあ歌手名はともかく、この中身ね。一聴すると地味で、何がおもしろいのか私もわからなかったんですけど、2度3度と聴くたびに良くなってきて。
 今では絶対の自信を持って名盤判定を下すことができます。
 iTunesで歌手名と曲名がちゃんと出るのも、どうやら、最近これがまた再発されたから、っていうことらしいんですよね。
 その辺ちょっとまだ未確認で、確認されればもちろんムッチマレコーズでも扱いたいと思ってるんですけど。
 とにかくちょっと聴いてみてください。

>>못난 내 청춘 さえない俺の青春

 キムジュンギュのこのヘナヘナした歌声がすばらしいのはもちろんなんだけど、ジャケットにわざわざ「ギター伴奏」とうたうだけあって、このギタリストがすばらしい! ジャマイカの至宝、アーネストラングリンを彷彿とさせますね。
 けれども真にすばらしいのは「뽕짝(ポンチャック)」という言葉の語源である「ポン、チャッ! ポン、チャッ!」というリズムをひたすらに刻み続けるセカンドギターだ!
 これはまさに、マイケルジャクソン「Beat It」で、バンヘイレンのギターソロには文句はないんだけれども、この曲のBeatのキレのよさは、スティーブルカサーが刻むバックのリフにこそ宿る。ということと同じではないでしょうか。
 例えが大げさだがわかりやすいでしょ?

 ただし残念なことに、90年代末の通貨危機と、それを克服する過程において、アメリカ的に弱肉強食化していった韓国社会からは、このCDに象徴されるような大陸的に「ユルーいノリ」はいまや完全に失われてしまいました。
 これ系の中途半端に古いポンチャックの再発が続いてるのも、失われた物への郷愁が拭いがたいからではないでしょうか?

 肝心の「サンサンシリーズ」については、次回、もうちょっとちゃんと書きます、すいません。

 ムッチマレコーズ(http://mutjima.jp/)もよろしくお願いします!

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